雲一つない晴れた日、特に夏の炎天下に窓を閉め切ったまま駐車場のど真ん中に駐車した車の車内は、言うまでもなく灼熱地獄と化する。
このような日にポータブル電源をそのまま車内に放置してどこかに出かけることは絶対にやめよう!たとえ数時間でもだ!
では、どんな状況でも車内に放置してはダメなのか?
一方で、車に戻ってドアを開けた途端に温度が一気に下がることは多くの人が経験しているだろう。
本記事ではきちんとポータブル電源の性質を理解した上で、やむを得ず車内に放置できるとしたらどんな対策をしたらいいのか?について、実験データをもとに紹介する!
夏でもポータブル電源を車に積んで使いたいと思っている方は是非参考にしていただきたい!
ちなみに、筆者は一時期関連業界に仕事でかかわったことがあり、、、その時の経験も考慮して記事にしている。
本記事で得られる情報
- ポータブル電源に使われているリチウムイオン二次電池の性質
- 快晴時の車内温度推移実験結果(実験対象車:筆者のハイエース)
- やむを得ずポータブル電源を車内に放置する時の唯一の方法
小難しそうな実験はどうでもよくて結論だけ早く知りたい方のために先に結論を記載しておこう!
結論
車種専用シェード(断熱効果ありのタイプ)を取り付け、冷凍保冷剤(最低500g×2個以上)を入れた保冷バック※①の中にポータブル電源を入れる方法であれば、日中(10時間程度)の単発なら猛暑日でも車内放置できそうだ!
ただし、どうしてもやむを得ない場合にとどめておいた方がいいだろう。あまり頻繁に行うと、温度は問題なくても湿気の影響で電池や電子機器に悪影響する可能性がある!また、本結論は筆者の車で検証したデータから導いたものであり、実行についてはそれぞれで判断していただきたい!
※①安いマイバックタイプはNG。必ずしっかりした保冷バックを準備すること
ポタ電に使用されているリチウムイオン二次電池とは?
ポータブル電源にはリチウムイオン二次電池が使われていることは、あまり電化製品に詳しくない人でも何となく聞いたことがあるだろう。
ネットで検索すれば三元系とかリン酸鉄とかの説明が詳しく書かれているので、ポータブル電源が気になっている方は必ずチェックしているはずだ。
多くのネット情報がおすすめしているように、これからポータブル電源を購入する方は、リン酸鉄系リチウムイオン二次電池製を購入するのがいいだろう。
なぜリン酸鉄リチウムイオン電池の方が良いのか?
ネットでリン酸鉄リチウムイオン二次電池の方が、安全・信頼性が高いともち上げられているが、よくある間違いとして、リン酸鉄系を選択したからといって、極端に高温放置に強くなるわけではない!
あくまでも正極材料の熱安定性が高いので熱暴走(これは末期症状であり、こうなった時は時すでに遅し状態・・・)に至りにくいって話だ。
リン酸鉄系(LiFePO4)はP(リン)とO(酸素)が強固な共有結合をしているので、高温になってもなかなか構造崩壊せず、酸素放出が起こり難い。酸素は熱暴走時のいわば燃料なので、これが放出され難いってことは熱暴走し難いってことなのだ(と想像する)!
ココで極端に高温放置に・・・と書いたが、方向性としてはおそらくリン酸鉄系の方が有利になるだろう。
これは作動電圧が低いことから想像できる。
ちなみに、作動電圧(ここでは一般的な公称電圧とした)はリン酸鉄:3.2V、三元系:3.6Vだ(各ポータブル電源メーカー仕様書から読み取れる)。
高温保存時の性能低下は、正極活物質材料云々よりも、電池の中でリチウムイオンの移動(充放電)に関与している有機電解液(電解質)の分解による内部抵抗増加が主原因である(と想像される)。有機電解液(電解質)は、電圧が高いとより分解されやすくなる(高電位側は酸化反応、低電位側は還元反応※②)ので、作動電圧が低いリン酸鉄系は、それだけ分解されにくくなるはず(と想像する)!
※②ざっくり酸化反応とは電子が奪われる反応、還元反応のとは電子をもらう反応だ!
リン酸鉄系ポータブル電源の温度使用範囲
リン酸鉄系のポータブル電源主要メーカーの仕様書によると、どのメーカーも使用&保管温度は40℃前後までとなっている。
なので、最高温度が40℃に到達しない条件、できれば38℃程度までの条件であれば、車内放置による性能低下を最小限にとどめることができると言えるだろう!
メーカー | Eco Flow DELTA2 | Jackery 1000Plus | Anker Solix C1000 |
推奨使用温度範囲 | 20 ~ 30℃ | – | ‐ |
使用温度範囲 | -10 ~ 45℃ | -10 ~ 45℃ | -10 ~ 40℃ |
充電温度範囲 | 0 ~ 45℃ | 0 ~ 45℃ | 0 ~ 40℃ |
保管温度範囲 | -10 ~ 45℃ | -20 ~ 45℃(1カ月) 0 ~ 45℃(3カ月) 0 ~ 25℃(1年) | 0 ~ 40℃ |
2024年ポータブル電源主要メーカー7社の全商品を徹底比較し、車中泊旅に最適なモデルを「車中泊目線」でランク付けしてみた。興味のある方は合わせてどうぞ!
2024年9月1日、EcoFlowからDELTA2の後継モデルDELTA3 Plusがリリースされた。車中泊目線で買いか否か?を考察してみたので、購入を迷っている方は是非参考に!
炎天下に駐車した車の車内温度
夏になるとJAF等の機関紙でこの手の実験データがよく報告されている。これはこれで非常に参考になるのだが、車の仕様が異なると過大もしくは過小評価となる可能性がある。実際にポータブル電源を載せるのは私の車(ハイエース)なので、実験好きな私は自分の車で試してみたかった・・・
実験の詳細に興味のある方は↓
結果サマリーは下記の通りである。
条件 | 実施日 | 天気 | 外気温 | 後部座席足元 | リア荷室床上 |
---|---|---|---|---|---|
シェード無 | 2024年4月28日 | ☀快晴 | 30.1℃ | 40.7℃ | 39.8℃ |
シェード有 | 2024年5月4日 | ☀快晴 | 29.9℃ | 35.3℃ | 34.7℃ |
網戸+シェード | 2024年5月5日 | ☀快晴 | 30.2℃ | 32.7℃ | 32.5℃ |
私のハイエースはある程度断熱仕様にしているのだが、これでは猛暑日(35℃以上)は全面シェード有でも確実に40℃前後に到達するだろう。
助手席と運転席の窓を全開にして網戸にすると、さらに効果的だが、外出先では防犯上の問題があるのでそうそう使える方法ではない。
以上の結果から、春~夏の真夏日(30℃以上)以上の日に、車側の対策で安全にポータブル電源を車内放置できそうな方法はなさそうだ!※③
ただし、防犯上の懸念がなければ網戸とシェードを並行使用することによって大幅に状況を改善することはできる!
※③もちろん、本格的な断熱性能のキャンピングカー等特別仕様車はココでは考察対象外だ
保冷バックにポータブル電源を入れてみた!
この結果のままでは、暑い日はポータブル電源を車に載せてドライブや車中泊するのを躊躇してしまいそうだ。
特に私のように、車中泊と日帰り登山を組み合わせて数日間車内放置するような使い方をする人にとっては深刻な問題である。
ということで、腹案として温めていた「保冷バックを使った時の効果」についても検証してみたので紹介しよう! これこそがメシア(救世主)となるのだった!
実験概要
まずは実験条件を紹介しよう。
使用した車は同じく私の愛車ハイエーススーパーGL(ナロー)、色はブラックマイカ(猛暑には超過酷色)である。
実験概要
- 条件:全面シェード(車種専用設計ユーアイビークル)+保冷バック(Beikemall 35ℓ)に冷凍保冷剤(500g×2個を布に巻く)を追加
- 放置場所はリア荷室床上
- 温度測定は保冷バックの中心(中空)に温度センシングを突っ込んで測定(測定時に開閉一切無)。もちろん保冷剤との距離を十分に確保!
実際の実験に使用した保冷バッグ商品のリンクは下記だが、残念ながら2024年6月以降、どのモールも売り切れてしまっているようだ!!!
なので、代替商品を紹介しよう。下記の商品ならサイズ的にも機能的にも実験に使用した商品と同等レベルであり、問題ないだろう!
実験結果
では、気になる実験結果を紹介しよう。
時間のない方は、読み飛ばして結論の部分だけ読んでいただければOKだ!
条件 | 実施日 | 天気 | 外気温 | リア荷室床上 | 保冷バック内 |
---|---|---|---|---|---|
保冷バック (冷凍保冷剤有) | 2024年5月11日 | ☀快晴 | 27.7℃ | 32.8℃ | 23.2℃ |
冷凍保冷剤(今回は500g×2個)を入れた保冷バック中の温度は、車内温度よりも常に10℃前後も低めに推移していることがわかる。
事前の予備実験によると、私の車では35℃以上の猛暑日の場合の車内温度は、全面シェード有で40℃~45℃くらいと想定される。
これよりも10℃程度低め推移ということは、つまり、保冷バック+冷凍保冷剤を使うと、日中(10時間程度)の単発使用であれば35℃以下をキープ出来る可能性が高い。
保冷剤の数を倍の4個に増やせば確実にキープできるだろう!
今回は保冷剤に布(ハンカチ)を巻いたが、これは保冷剤による結露でポータブル電源を入れた想定時に水滴がつくのを防止するためである。
同時に保冷剤の保冷効果も維持されるので一石二鳥だ!(と思う)
念のため補足しておくが、保冷剤を入れないで保冷バックだけでもいいのでは?についてももちろん実験で確認しているのだが、、、残念ながらほぼ無意味(数℃程度の遅延効果しかない)であることがわかった。また、スーパー等の試供品でもらう安い保冷バック(マイバック)も試しているが、こちらは保冷効果が乏しく、保冷剤の数を相当数増やさないと日中もたないだろう。
ということで、あらためて結論を示すと
結論
車種専用シェード(断熱効果ありのタイプ)を取り付け、冷凍保冷剤(最低500g×2個以上)を入れた保冷バックの中にポータブル電源を入れる方法であれば、日中(10時間程度)の単発なら猛暑日でも車内放置できそうだ!
ただし、どうしてもやむを得ない場合にとどめておいた方がいいだろう。あまり頻繁に行うと、温度は問題なくても湿気の影響で電池や電子機器に悪影響する可能性がある!また、本結論は筆者の車で検証したデータから導いたものであり、実行についてはそれぞれで判断していただきたい!
冷凍保冷剤の確保
外出先で冷凍保冷剤が都合よく入手できることはまれだろう。
なので、今回の方法を実践するためには「ポータブル冷蔵庫」か「高性能クーラーボックス」も準備しておく必要がある。
どちらも、本来の目的でもとても便利なので、車中泊旅ではうまく使い分けながら準備しておきたい。
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ポータブル冷蔵庫 アイリスオーヤマちなみに、夏場の車中泊旅において、私のように日中登山等で長時間車を離れることが多い方は、ポータブル冷蔵庫よりも高性能クーラーボックスの方が使い勝手が断然良い。気になる方はこちらの記事も是非!
最後に
夏の炎天下で積極的に車内にポータブル電源を放置することは私もNGと考えるが、どうしてもやむをえない場合や単発でという前提において、誰でも実践できる方法を紹介してみた!
加えて、車を止める場所を選ぶことができるならば、日中日陰になりそうなところに駐車するのも効果的だろう。
また、安全性と性能の観点から、ポータブル電源の充電量を50%程度の容量に調整しておくのが望ましいことも合わせて覚えておくといいだろう!
これは車内放置に限らず、家で長期間使用しないときにも当てはまることである。
ポータブル電源の性質をしっかり理解した上で、ガンガン使っていこう!
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